金色の光が消え、
麒麟の気配が天啓の空の彼方へ溶けていった。
光脈の上に立つ凌暁と雪蘭は、
その余韻の中で
静かに手を握り合っていた。

やがて、蓮音の宣言が神殿に響いた。
「……光脈の儀、これにて閉じる。」
その瞬間、
押し寄せるように周囲から歓声とざわめきが上がった。
「なんと……本当に麒麟の光が……!」
「霜華国が選ばれたのか……!」
「麒麟から加護を得るのは百年ぶりだぞ……!」

称賛、羨望、畏怖、期待――
さまざまな感情が渦巻き、
空気が震えるほどだった。

だが、
その中心にいる二人は
浮かれた様子を一切見せない。
加護は栄誉ではなく “使命” である。
麒麟の出現は“太平の世が訪れる”前兆とされる。
その加護が与えられたということは――

これから世の乱れを静め、
争いを正し、国々を導く責任が
2人にのしかかるということ。

雪蘭は静かに目を伏せ、呟くように言った。
「……重い責(せめ)を託されましたね。」
凌暁は深く頷き、
温かく雪蘭の手を包む。
「恐れなくていい。二人で背負えば、きっと越えられる。」
雪蘭もまた、
そっと微笑み返す。