黄金の光脈は天へと昇り、
神殿の天井に渦を描くように広がった。

そして光の中から、
一頭の美しい白鹿が姿を現す。
角は天に届かんばかりに雄々しく、
揺らめく黄金の尾が床を照らす。

〈――選んだ。〉
声は響かない。
脳に、心に、霊魂に直接届く。

鹿はゆっくりと二人に歩み寄り、
まず雪蘭の額へ、
そして凌暁の額へと、
静かに鼻先を触れさせた。

それは祝福であり、
契約であり、
未来を託す“選定”だった。

〈平和を求める者よ。
汝らに、麒麟の加護を与えよう。〉
光が弾け、
鹿の姿はゆっくりと消えていく。

残されたのは――
温かな金色の風と、
選ばれし者となった二人。
神殿は沈黙し、
誰もがただ呆然と二人を見つめるしかなかった。

でも、凌暁と雪蘭はただ静かに見つめ合い、
そっと手を握り合った。
「……雪蘭。」
「……はい。」
「これが……私たちの道なのだ。」
「ええ。どんな未来でも――共に参ります。」

光脈の儀は、
こうして“歴史に残る奇跡の朝”として幕を閉じた。