「……だめです、そんな……恥ずかしい……」

凌暁は優しく笑い、
胸に頬を寄せてくる雪蘭の頭を包むように撫で、
今度は指先で彼女の腕をゆるりとなぞった。
肩から肘、肘から手首へ。
そして、かすかに震える雪蘭の指先に触れる。
そっと絡め取るように握り、
指の一本一本を確かめるように撫でた。

「……全部、覚えておきたいんだ。
そなたの温もりも、形も、息遣いも……」
胸に顔を埋めたままの雪蘭は、
反則的に甘いその言葉に耐え切れず、
耳まで真っ赤になって小さく震えた。
「そんな……それではまるで私と凌暁様が離れ離れになってしまうようではありませんか。」

凌暁は、そんな雪蘭の髪に口づけしながら、
彼女を包み込む腕にさらに力を込めた。
「離れないでくれ。……雪蘭。」

雪蘭は胸の中で、
彼の衣をぎゅっと握り返した。
「……離れません。絶対に。」

ふたりは、そのまま互いの存在を確かめ合うように抱き合い、
静かに眠りへと落ちていった。