黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

「雪蘭様! 凌暁様!」

二人は水鏡の前で膝をついており、
神官たちが慌てて駆け寄っていた。
雪蘭の身体は透けておらず、
凌暁も無傷。

しかし──
周囲の誰もが分かった。
今、二人の身に“神の世界”が触れたのだと。

誰も言葉を発せず、
ただ息を呑んで二人を見守る。

蓮音は震える声で呟いた。
「……麒麟の……お声を、聞かれたのですか……?」
しかし二人は答えられなかった。
今はまだ、
あの世界が消えた余韻が胸に残りすぎていたのだ。

けれどただ一つ、
そこにいた全員が感じていた。
──今年こそ、幻獣の加護が下る。

天啓の神殿に、静かな興奮が広がった。