この日の儀式は、
翌日の最終神事——
麒麟への奉上儀に備えて行われる、
“徹底した身心の清め”であった。

麒麟は五幻獣の頂点にして、最も徳が高く、
“清浄そのもの”を象徴する存在。

そのため、
国主や正妃たちも普段とはまったく違う、
特別な浄化を受ける必要がある。

まず行われるのが、
湯殿での「湧泉の湯清め」である。
天啓の地の中心にある神泉の水を、
大きな湯殿に注ぎ、
薬草と香木を合わせて煮出した湯に浸る。

湯の中には、以下のものが沈められていた。
・清涼の香りを放つ 蒼葉草
・心を鎮める 白檀木
・神々への道を開くとされる 霊蓮の花弁
湯の色はわずかに金色がかっており、
表面には光の粒が浮かんでいた。

雪蘭が湯に足を入れると、
ぴりっとした神気のような感覚が足先を撫でる。
(……気持ちいい……)

湯は熱い——
誰もが数分浸かっては上がるのを繰り返す。