しばらくして、
雪蘭は勇気を振り絞って小さくささやいた。
「……凌暁様。」
「ん?」
「最終日……幻獣は現れると思いますか?」
凌暁は少しだけ迷うような沈黙を置き、
そのあと静かに答えた。
「——きっと現れる。理由はないが……そう思う。お前と話していた時からずっと、胸の奥に光がある。」
「光……?」
「ああ。まるで……幻獣に導かれているような。」

腕枕の位置から見上げると、
凌暁の横顔は、誰より優しく見えた。
雪蘭の胸にぽっと温かなものが広がる。
「……私も、幻獣は現れるとそう思います。」
「そうか。」

そして——
雪蘭の視線を追うように、
凌暁がそっと額に自分の額を寄せた。
「今夜は……私のそばで眠れ。」
「……はい……」
雪蘭は自然と目を閉じた。
そのまま凌暁の腕の中で、
胸の鼓動と同じリズムに呼吸を合わせながら、
静かに眠りへ落ちていく。