「んっ。」
雪蘭が再び目を覚ますと、
もう辺りは真っ暗になっていた。
どれくらい眠っていたのだろう。

雪蘭の気配に気づいた凌暁が
読んでいた書物からふっと目を上げる。
「目が覚めたのか、雪蘭。」
雪蘭が頷くと、
凌暁も布団にやって来て横になる。

超常現象を体験した後だからか、
なぜだか無性に誰かの温もりを求める雪蘭は
凌暁の存在を求め、凌暁もそれに応える。
ふたりは自然と布団の中で向かい合い、
吐息が混ざる距離で今日の出来事を語り合った。

「今日、あれほどの神気に触れて……怖くはなかったか。」
その声音は、
どこか自分を責めているような優しさを含んでいた。
雪蘭は小さく首を振る。
「いいえ。でも……凌暁様が、すぐ駆け寄ってくださったから……怖くなかったです。」

腕の中でそう告げると、
凌暁の喉が微かに震えた。
「……それは、よかった。」
彼の腕に、ほんの少し力がこもる。
胸の間の距離が、ふっと縮まる。
(こんなに近いのに……怖くない。むしろ……安心する……)

雪蘭の呼吸に合わせて、
凌暁の体温がゆるく伝わる。