一方、
雪蘭は控えの間で他国の妃たちと並び、
一心に祈りを捧げていた。
冷たい石床に正座し続け、
灯明のゆらめく光を見つめる。
祈りの最中、外の風が強く吹き込み、
燭台の炎が大きく揺れた。
その時――
雪蘭の胸に、不思議な感覚が走った。
“……国主様が、風の中にいる。”
見たこともない風景が一瞬、
まぶたの裏に浮かんだのだ。
まるで眼の前の風景かの如く、鮮明に。
彼が滝の前で、静かに祈っている姿。
濡れた髪、凛とした眼差し。
その全てが、水の光に包まれていた。
雪蘭ははっと目を開ける。
誰も気づかないうちに、
そっと手を胸の前で合わせた。
(……どうか、あの方に加護を……この過酷な神事をやり遂げることが出来ますように。)
正座をし続けた足は痺れて
既に感覚を失っている。
それでも極寒の滝壺で祈りを捧げる凌暁に比べたら
自分の足の痺れなど取るに足りないもの。
雪蘭はただ一心に祈るのであった。
雪蘭は控えの間で他国の妃たちと並び、
一心に祈りを捧げていた。
冷たい石床に正座し続け、
灯明のゆらめく光を見つめる。
祈りの最中、外の風が強く吹き込み、
燭台の炎が大きく揺れた。
その時――
雪蘭の胸に、不思議な感覚が走った。
“……国主様が、風の中にいる。”
見たこともない風景が一瞬、
まぶたの裏に浮かんだのだ。
まるで眼の前の風景かの如く、鮮明に。
彼が滝の前で、静かに祈っている姿。
濡れた髪、凛とした眼差し。
その全てが、水の光に包まれていた。
雪蘭ははっと目を開ける。
誰も気づかないうちに、
そっと手を胸の前で合わせた。
(……どうか、あの方に加護を……この過酷な神事をやり遂げることが出来ますように。)
正座をし続けた足は痺れて
既に感覚を失っている。
それでも極寒の滝壺で祈りを捧げる凌暁に比べたら
自分の足の痺れなど取るに足りないもの。
雪蘭はただ一心に祈るのであった。



