吉報は瞬く間に宮中へ広がり、
女官も侍従も大臣も、誰もが笑顔になった。
「麒麟様のご加護だ!」
「霜華国に新たな希望が生まれた!」

外では民たちが灯籠を掲げ、
「皇子か皇女か」と期待に胸を膨らませる。

だが──
翌日から、凌暁は明らかに変わってしまった。

◆ 朝
「雪蘭、起き上がるのはゆっくりだ。転ぶと危ない。」
「わ、わたしはまだ座っているだけで……」
「座るのにも気力がいる。ほら、手を。」
(※手を引くだけでなく、ほぼ抱き上げる)

◆ 食事
「これは塩気が強い。身体に良くない。替えさせよう。」
「でも美味しいですし……」
「駄目だ。お前はもう一人の身体ではない。」
(※厨房に走る女官)

◆ 廊下を歩くとき
雪蘭が一歩踏み出すたびに──
凌暁の両手が常に背と腰にある。
「そんなに支えなくても……」
「転んだらどうする。手を貸す。」
「今は……畳の上ですよ……?」
「畳でも怪我はする。」
「…………」

◆ 執務中
雪蘭が横でお茶を飲んでいるだけなのに
時々視線を向けて、
「苦しくないか?」
「眠くなったらすぐに言え。」
「腹は?痛くない?」
「今の顔色が少し赤い、熱では……?」
「女官!水を!いや、氷を!いや、薬湯を!」
「り、凌暁様落ち着いてくださいませっ!」

一時が万事こんな有様で、
雪蘭でさえも凌暁の過保護っぷりに
苦笑するしかなかった。