そして、季節が一つめぐったころ。
雪蘭は、朝になると胸がむかむかし、
日中は妙に眠くて仕方がなかった。

ある朝、顔色の優れない雪蘭を見た凌暁が
すぐさま駆け寄った。
「雪蘭!どうした、また具合が悪いのか?」
「いえ……少し、胸がむかむかするだけで……」
雪蘭は無理に微笑むが、凌暁の目は鋭い。
「胸がむかむか? 昨夜も食が進んでいなかった。これは……良くない。」

すぐさま女官を呼び、医師を手配させた。
医師が脈を取り、丹念に診察したあと、
深く頭を下げた。
「おめでとうございます、国主様、雪蘭様。……ご懐妊にございます。」

雪蘭は一瞬ぽかんとし、
それからゆっくり目を見開いた。
「……わ、わたしに……赤ちゃんが……?」
雪蘭は恐る恐る自分のお腹に手を当てる。

直後、凌暁の手が震えた。
「……本当、なのか?」
「ええ、間違いございません。」

凌暁は雪蘭の肩を両手で支え、
息を詰めるように見つめた。
「雪蘭……!本当に……?」
雪蘭が小さく笑いながら頷く。
「はい……。わたしたちの子がここに。」

次の瞬間、凌暁は雪蘭を強く抱き寄せた。
「……ありがとう……雪蘭……。ありがとう……!」

普段は冷静な国主が、
声を震わせて喜んでいる。
雪蘭は胸がじんわりと熱くなり、
そっと凌暁の背に手を回した。