「り、凌暁様ぁぁ……」

凌暁は頭を押さえながら言った。
「すまない雪蘭……。麒麟はこういう奴なのだ。」

麒麟はさらに楽しそうに尻尾を揺らす。
『いやぁ、しかし。昨夜の“あれ”なら、数か月後には……ふふ、楽しみじゃな。』
「！？」
雪蘭の顔は茹でた桃のようになり、
凌暁は完全に目をそらしながら咳払いする。
「やめろ。雪蘭が困っている。」
『困っているのはそなたの方じゃなかろうか？
まあ、楽しみにしておるぞ、凌暁。“父親になる覚悟”はあるか？』
「……っ！」

どちらの顔も、今度は真っ赤になった。
麒麟だけが腹を抱えて笑っている。
『いやぁ、若い若い。まったく、微笑ましいわ。』

そう言い残し、
麒麟は光の粒となって去っていった。

部屋に残った二人は──
布団の中で、雪蘭が小声で呟いた。
「……麒麟様、意地悪すぎます……」
凌暁はため息をつきつつ、
彼女を抱き寄せる。
「……全くだ。だが……」
雪蘭の耳元に唇を寄せ、低く囁く。
「……“父親になる覚悟”と言われて、嫌ではなかった。」
「！！？」

雪蘭の顔が、
頭から湯気が出そうなほど真っ赤になる。
その可愛さに、
凌暁はたまらず雪蘭の額にそっとキスを落とした。