黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

数日後。
凌暁は雪蘭をそっと抱き寄せながら言う。

「気晴らしに、都へ出よう。そなたは、閉じ込めておくには惜しいほど美しい。」
「え……!?」
国主自ら妃を連れて城を出るなど滅多にない。
雪蘭は驚いたが、
凌暁は当然のように手を取り、微笑んだ。

都に国主とその妃が現れたという噂は、
瞬く間に広まった。
「見て!あの白い衣……麒麟の姫だ……!」
「なんて綺麗なんだ……」
雪蘭は人々の視線に戸惑い、
少し後ずさりしそうになる。

しかし凌暁がそっと腰を抱き寄せた。
「雪蘭、怖がるな。皆、そなたに見惚れているだけだ。」
「み、見惚れるなんて……」
「当然だろう。」
さらりと言うその声音が甘すぎて、
周囲の方が赤くなる。

「凌暁様……!人前でそんな……!」
「人前だろうと、そなたは私の妃だ。誇らしい。」

通りすがりの町娘が、
友達の腕を掴んでひそひそ声を上げる。
「やだ……あの2人、見てるこっちが恥ずかしくなる……!」
「国主様ってあんなに愛情表現するんだ……!」
「雪蘭様、幸せそう……!」
雪蘭はさらに顔を赤くし、袖で口元を隠す。
「り、凌暁様……国民の皆さまが見ています……」
「見せつけておけば良い。」
「えっ!?!?」
「私は、妃を心から愛していると。」
さらっと言ってしまう凌暁。
周りから小さな歓声が上がり、
通りがざわめいた。