黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

一方その頃。
宮中の朝はいつも通り始まろうとしていた。

雪蘭の部屋の前には、
お仕えの女官たちが朝の支度のために並んでいた。

“今朝はまだお部屋が静かだな……”
と思っていたその時。

――ガチャ
扉が開き、中から現れたのは──

凌暁。

「…………」
「…………」

「「「ひっ……!!」」」

時間が止まった。
凌暁は少し寝癖の残る髪、
ゆるく羽織った外套、
そして……
首元にうっすら残る紅潮。

国主の品格はあるが、
どう見ても“雪蘭の部屋で朝を迎えました”の雰囲気。

「ほ、本当に……お泊まりに……!?」
「ちょっ、落ち着いて!声が大きい!」
「で、でも、あの……国主さまの、その……!」

凌暁は咳払いして、
彼女らを静かに見渡した。
「……雪蘭はまだ休んでいる。起こすな。今日は政務を免除する。」

「「「は、はい!!!」」」




凌暁が去った後──
「ど、どうしましょう……これ……!」
「ついに……ついに……そういことよね!」
「あぁ、尊すぎて……仕事にならない……!」

朝から宮中の空気は妙に熱かった。