蓮音が倒れ、
神殿には久方ぶりに真に清浄な気配が満ちていた。
凌暁と雪蘭が息を整えると、
五幻獣はそれぞれの姿を淡く揺らしながら
二人に近づく。

青龍は凌暁の前に立ち、低い声で告げる。
「人の世の濁りは絶えぬ。だが、その濁りを恐れるな。おまえは水だ。形を変え、流れを見極めよ。」

白虎は雪蘭を鋭い目で見据えた。
「守るべきものを見誤るな。時に爪を立てることも王の務めだ。」

朱雀は二人に羽根のような光を散らしながら囁く。
「情は弱さではない。燃やせ。民のため、自らのため。」

玄武は静かに頭を垂れた。
「道は長い。されど、歩み続ける者のみが国を背負える。」

そして最後に、
麒麟がゆっくりと首をもたげ、
柔らかな瞳で二人を見た。
「よくやった、霜華国の子らよ。心配はいらぬ――安心して国に帰れ。」

声が消えると同時に、
五幻獣は光の粒になって空へと溶けていった。

凌暁と雪蘭は新しい神殿長と固く握手を交わし、
深く頭を下げる。
「必ずまた、再建に力を貸します。」
神官たちに見送られ、
二人は晴れやかな気持ちで
霜華国への帰途についた。