黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

神殿の最奥――
蓮音は祭壇の中央に立ち、
かつての神子の威光を必死にまとっていた。
「ここまで来たのね……雪蘭。」

その声は震えているのに、
必死で威圧的に響かせている。
背後には、
従うふりをし続けてきた取り巻きの神官たち。
蓮音の霊力が弱まっていることは、
彼らも既に気づいていた。
だが、まだ蓮音には「神殿の権威」がある。
それだけで彼女は威圧感を保てた。

雪蘭は一瞬たじろぎ、肩を震わせる。
その背後で凌暁が彼女の手をそっと支えた。
「怖くない。私も一緒だ。」
その言葉に雪蘭の呼吸が少し整った——
だが、蓮音はそれを嘲笑した。
「守られてばかりの女に、何ができるの？あなたはただの“器”よ。力を持つのは私。この神殿を動かすのも、神の名を預かるのも私よ！」

蓮音の周囲が黒い霊気でざわついた。
穢れた霊力――だが、数は圧倒的だった。
蓮音は両腕を広げ、叫ぶ。
「神殿を拒む者は、ここで死ね！！」
黒い霊弾が無数に放たれ、
凌暁と雪蘭に降り注ぐ。

「雪蘭、下がれ！」
凌暁が身を挺して守る。
――その瞬間。

床がひび割れ、黄金の光が迸った。