クラスというのには必ずカーストがつきもので、カースト上位の言うことには逆らえない風潮がある。
 窓から見える校庭では複数人が走り回っている。
 ー高校生なのにガキみたい。
 そう思った時、後ろの方で水が溢れた音がした。
 音の方向を見ると、カースト上位勢の「三津井北斗(みついほくと)」と、いじめられっ子の「明智尚也(あけちなおや)」がいた。
 どうやら明智くんに三津井くんがバケツの水をかけたらしい。
「明智く〜ん。早く水拭きなよぉ〜www」
 三津井くんはそれを見てゲラゲラと笑っている。 被害者は完全に三津井くんではないのに言いなりになってその水を拭く明智くん。
ーいじめなんてしなきゃいいのに。バカバカしい。
 そう思うけど、私に止める勇気はない。標的が私になるなんて嫌だから。
 誰かの平穏を守るには、誰かの平穏の犠牲があるんだと、このクラスから学んだ。
 言われるがまま、びしょ濡れの明智くんは雑巾で拭いている。それをみている三津井くん、三津井くんの友達のカースト上位勢。
 明智くんのことを見て見ぬふりをして、自分の平穏を守りたいその他のクラスメート。
 そして、いじめられっ子の明智くん。
 そんな感じでクラスは構成されていた。
ーはぁ‥。受験もっと頑張ればよかった。
 私は元々第1志望だった名門私立高校の「桜鳥高校」に落ちている。私の学力なら絶対受かると過信して、滑り止めも受けていなかった私は、この荒れたマンモス校「白雷高校」の2次募集で入ることになった。
「はい、皆さん、席についてー‥。」
 教室のドアが空いて担任の古坂先生が入ってきた。茶髪でロングヘア。顔は結構整った去年新卒で教員になったらしい、23歳の女性だ。優良物件だと思う。今にでも人を殺しそうで、死にそうな、表情をいつもしていなければの話だけど。