「わぁ、素敵っ!!」

 ただの夕暮れに歩いていれば見れるふつうの夕焼けなのに、「素敵」といえる彼女の心の中が素敵だと思っていた。
 つられて、
「そうだね。きれいだ。」
といったけれど、その声は少しばかり震えてしまう。今日、遂にこの思いを伝えるんだー‥。そう分かっているけど、タイミングがわからない。
 もっといい場所で言ったほうが良いのか?いやでもこの時間帯で遠くに行くのもは彼女の負担になってしまうか‥?
 顎に手を当て考える。今言うか、今じゃない別の日に言うか。
 心の中で会議していたら、彼女がこちらをみていた。
「ふふっ。何か言いたいことがあるんじゃないの?顎、手がついてますよ〜!!」
 彼女は自分のクセを知っている。それをバカにしながら言ってきたけど、その反面、彼女の頬と耳は紅くて、何か期待しているような顔だった。
 そんな顔されたら言っちゃうだろ。
「好きだ。」
 彼女は面食らった顔をしている。でも構わず続けた。
「■■■■さん、僕と付き合ってください。」
差し出したては少し震えてしまった。顔が熱い。胸の鼓動って、こんなに大きかったっけ?
「っあ、わ、わたしはっー‥。」
彼女は目を泳がせながら、次第に顔を紅くして言った。
「私も、すー」
頭の中でハッピーエンドのようなファンファーレの音が聞こえた。

現実では、猛スピードでこちらに向かってくる車のクラクションの音が鳴り響いていた。

もし、もっと早く車に気づいていたら、

もし、彼女を突き飛ばして助けられたら、

もし、彼女に突き飛ばしてもらっていなかったら、

もし、こんなところで告白しなければ、


ーきっと彼女は死ななかった。