「あの、603号室の内海(うつみ)さんなんですが、便秘薬の服用をやめた途端にまた便秘気味になってしまったようで……」

「そうなんですね。では、また前回と同じ便秘薬を処方しておきます。薬剤部には私から連絡しておきますね」

ニコリと笑いかけると、薬師寺くんの頰が赤く染まった。薬師寺くんは「えっと、その……」と何か言いたげ。

「先生、そのピアス素敵ですね。どちらで買われたんですか?」

私は耳に触れる。耳には雪の結晶をモチーフにしたピアスが揺れている。仁くんが先週あった私の誕生日にプレゼントしてくれたものだ。……と言っても本人には合っておらず、「誕生日おめでとう」というLINEと机の上にピアスの入った箱があっただけだったけど。でも、嬉しかった。

「ありがとうございます。これ、彼からのプレゼントで。どこで買ったのかは聞かないとわかりません」

「そ、そうなんですね……」

薬師寺くんは、何故かちょっと落ち込んだ様子で私から離れていった。同期の男性看護師に「ほら、いい加減諦めろよ〜!」と言われながら肩をバシバシ叩かれている。