「えっ……ここって……」

車に乗せられて連れて行かれた場所に、私はポカンとして足を止める。そこは綺麗なドレスがたくさん揃っている高そうなブティックだった。

「藍、行こうぜ」

仁くんが私の手を引いて、迷うことなくブティックの中に入る。どうしてこんなお店に来なきゃいけないんだろう。。こんなところ、仁くんとのデートで来たことは一度もない。

「いらっしゃいませ」

黒いスーツを着た綺麗な店員さんがペコリと頭を下げる。天井に吊り下げられたシャンデリアも、綺麗なドレスやワンピースも、何もかもが輝いて見える。安いお店で買ったシャツとデニムという格好+ナチュラルメイクなんて場違いに思えてしまう。

「じ、仁くん!何でこんなところに?」

不安を感じながら訊ねる。仁くんはニコリと笑った。そして「そんな心配しなくてもいいって」と言った後、店員さんを呼ぶ。

「こいつに似合うドレスを頼む」

「かしこまりました。お嬢様、こちらへどうぞ」

店員さんに試着室に連れて行かれ、たくさんのドレスを持って来られた。そして着せ替え人形のように着替えさせられる。戸惑う私の前で、店員さんが「こっちでしょうか。それともあっち?」と真剣な表情をしていた。