朝が来て目を覚ます。少し寝返りを打てば、ひんやりとした感触。二人で寝るために買ったダブルベッドには、私一人しか寝ていない。

仁くんと付き合って五年。同棲して二年。ここ数週間はすれ違いの生活が続いていて、お互いに顔をまともにみたいない。仁くんはどうやら大きな事件を追っているらしい。

「おはよう」

一人で住むには広い部屋で、私はポツリと呟く。そして出勤するためにベッドから起き上がった。今日も手術が数件ある。

「おはようございます」

職場である総合病院の外科病棟ナースステーションに入り、挨拶をする。すでに看護師長や看護師、同僚の医師たちが揃っており、私は空いているパソコンを見つけ、患者の状態をチェックするために椅子に座る。すると、「先生、今よろしいですか?」と声をかけられた。

「薬師寺(やくしじ)さん、何かありましたか?」

私に話しかけてくれた薬師寺くんは、看護師になって二年目の男性だ。仕事熱心で、他の同期の仕事をよく手伝っている場面を見たことがある。患者さんからの信頼も厚い。