上に提出しなきゃいけない書類もようやく片付き、ようやく俺たちは長い捜査から解放された。警視庁を出る俺の頭の中は藍でいっぱいだった。

「やっと会える!」

梶原や神崎にも揶揄われてしまうほど、俺は浮かれまくっていた。鞄の中を漁る。その中には指輪がきちんと入っていた。……ようやく、これを渡す時が来たんだ!

この日のためにすでに準備は整えてある。あとは藍をそこに連れて行くだけだ。ずっと眠れていないはずなのに、足取りがやけに軽い。数日前まで鉛のように重かったのが嘘みたいだ。

車に乗り込み、シートベルトをする。エンジンをかけようとして、藍に何も連絡していなかったことを思い出した。スマホを取り出してLINEを開く。

「ん?」

藍からのメッセージが何もない。いつもなら、事件解決がわかってすぐに「お疲れ様」ってくるのに。

「藍も仕事が忙しかったのかな」

フッと笑ってしまう。さて、LINEは何を送ろうか。寂しくさせてしまった謝罪はちゃんと目を見て言いたい。だから少し考えて『今から部屋に帰る』とだけ送った。