俺、工藤仁(くどうじん)には付き合って五年になる恋人がいる。人の命を救う医者だ。医者の花形とも言われる外科で多くの命と向き合っている。

俺は警察官で彼女は医者。だから、互いに忙しくてデートもそんなにできねぇ。俺も彼女も、デート中に事件やら患者の急変やらで呼び出されることが多いからな。

そんな彼女との出会いは五年前。俺が警察学校を卒業して捜査一課に配属されてしばらくした頃、俺は仕事で怪我を負ってしまった。完全に俺のミスだ。犯人に隙を見せてしまい、ナイフで刺されてしまった。

そんな俺に治療をしてくれたのが彼女の藍だった。研修医だと言われたが、それを感じさせない腕の持ち主だった。俺は結構出血していたのに、動揺することなく治療してくれた。

「折山先生、よかったら食事どうですか?俺、結構うまい店知ってて……」

治療が終わった後、俺は緊張しながら彼女を食事に誘った。今誘わないと後悔するぞと本能的に思ったんだ。

「えっと、私でよければ……」

そう恥ずかしそうに言われた時、その場で飛び上がりたいほど幸せだった。デートを重ねて付き合うことが正式に決まった時は、学生みたいに舞い上がってなかなか寝付けなかったくらいだった。