私、折山藍(おりやまあい)には付き合って五年になる恋人がいる。市民の安心安全を守る警察官だ。警視庁捜査一課に配属されていて、殺人事件など凶悪な事件を追っている。

だから会える回数も普通の恋人同士より少ないし、デートの途中で帰ってしまう。だけど、正義感が強くてかっこいい自慢の彼氏だ。

そんな彼との出会いは五年前、私がまだ研修医だった時のこと。救急科で研修中だった私は、救急隊から一本の連絡を受けた。

『二十代の警察官が負傷しました。そちらに搬送しても大丈夫ですか?』

そうして搬送されてきたのが彼氏だった。話を聞くと、民家に侵入した強盗を逮捕しようとした際に強盗が不意を突いて抵抗し、所持していたナイフで刺されたのだという。搬送されてきた彼氏は出血が多かったものの、意識はしっかりとしていた。

「大丈夫ですか!?医師の折山と言います!!今からあなたの治療をしますね!!」

「……ありがと、センセ」

彼氏はそう言ってフッと笑った。痛くて堪らないはずなのに、優しく笑ってくれた。それがすごく印象的だった。

治療が終わって落ち着いた後、まさか食事に誘われて交際が始まるとはこの時には夢にも思っていなかったけど……。