結局、
フィリップの願いは認められることなく
喧嘩別れとなってしまった。
同じ宮殿にいながら、
目を合わせることも、
言葉を交わすこともない。
そんな緊張状態が何日も続き、
宮殿は殺伐とした空気が流れていた。
未だにフィリップの結婚を認められないまでも、
このままではいけないと
頭を抱える女帝のもとに封書が届いた。
差出人は――ウィステリア王ウィリアム。
女帝が封を切ると、
そこには端正な筆致でこう綴られていた。
『ミレーヌは我が国の誇りであり、
新しい時代を象徴する女性です。
彼女を失うのはウィステリアにとって惜しいことですが、
フィリップ王子のような理想に燃える若者と共に歩むなら、彼女の才は世界を照らすでしょう。
私は親愛なる陛下にお願い申し上げます。
どうか、未来を縛らないでください。
― W』
読み終えた女帝ヴィルヘルミーナは
しばらく目を閉じ、
やがて小さく微笑んだ。
「……どうやら、私の時代は終わったようね。」
彼女はゆっくりと立ち上がり、
その手紙を皇太子アレクシスに渡す。
「アレクシス、私は新しい時代に賭けてみようと思います。帝位はお前に譲る。そして――新皇太子には、フィリップを指名する。」
「母上……!」
「あの子の中には、古い血筋の誇りではなく、“新しい時代の風”が流れている。それが、この国を未来へ導く光になるでしょう。」
フィリップの願いは認められることなく
喧嘩別れとなってしまった。
同じ宮殿にいながら、
目を合わせることも、
言葉を交わすこともない。
そんな緊張状態が何日も続き、
宮殿は殺伐とした空気が流れていた。
未だにフィリップの結婚を認められないまでも、
このままではいけないと
頭を抱える女帝のもとに封書が届いた。
差出人は――ウィステリア王ウィリアム。
女帝が封を切ると、
そこには端正な筆致でこう綴られていた。
『ミレーヌは我が国の誇りであり、
新しい時代を象徴する女性です。
彼女を失うのはウィステリアにとって惜しいことですが、
フィリップ王子のような理想に燃える若者と共に歩むなら、彼女の才は世界を照らすでしょう。
私は親愛なる陛下にお願い申し上げます。
どうか、未来を縛らないでください。
― W』
読み終えた女帝ヴィルヘルミーナは
しばらく目を閉じ、
やがて小さく微笑んだ。
「……どうやら、私の時代は終わったようね。」
彼女はゆっくりと立ち上がり、
その手紙を皇太子アレクシスに渡す。
「アレクシス、私は新しい時代に賭けてみようと思います。帝位はお前に譲る。そして――新皇太子には、フィリップを指名する。」
「母上……!」
「あの子の中には、古い血筋の誇りではなく、“新しい時代の風”が流れている。それが、この国を未来へ導く光になるでしょう。」



