丁字路に立つその人がYさんだと認めた私は、すぐに頭を下げて挨拶をしました。
するとYさんは今ようやく私の存在に気が付いた様子で視線をこちらへ向けて、クシュッとした笑顔になりました。
人懐っこそうなその表情は、地域行事で集まった時によく見るものです。

「やぁ、こんにちは。今帰りかい?」
「はい」
「気をつけて帰るんだよ」
Yさんはそう言うと視線を上の方へと投げかけました。

私が丁字路を曲がってきたときにも同じ角度で何かを見ていたのを思い出し、私も自然と同じように上を見上げました。
今日はいい天気で、オレンジ色に染まる空には雲一つありません。
山の間を2羽のカラスが飛んでいくのが見えました。