好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!

「ああ、ありがとう」と父親は微笑する。「行ったことがないんだよ石川には。どんなところだい。……といっても、答えづらいかもしれないけれど……」

「魚が旨いです」

「ああ、魚。いいねぇ。長野では食べられないものが食べられそうだ。紘花がね、小学校の頃何度か行ったことがあるんだよ」

「うん。そうなの。研修旅行でね。お魚は食べなかったけど」

「今度、お父さんと二人で来るといい」

「え。いいの」

「いいよ」

 どうにも周囲の人間を巻き込むと話がそれだけ大きくなる。

 かえって彼女のほうが冷や汗をかいた。平然とした蒔田の表情。外堀を着実に埋められているのが分かっていないのか。

「蒔田くんの趣味は、なんだい」と、父親が話題を変えた。

「特にありませんが、……コーヒー淹れることくらいですかね」

「ほう。コーヒー」

「今度お父さんが東京に来た際、お淹れしますよ」

 彼女は話に入りづらい。

 東京に来たときの約束までしてしまった。しかも『お父さん』と来た。