令嬢は農地改革から始めるそうです 〜王都を飛び出したら人生が充実しすぎて困る〜

「村の外に出ますわ」

その宣言を聞いたとき、村人たちは震えた。いや、震えたのはアメリアの覚悟の強さによってである。

「自給自足から、自立。そして今、“連携”の時代ですわ!」

文明が通り、水が流れ、経済が芽吹いた今、次に耕すのは“関係性”という土壌。

村は島ではない。他村と繋がり、支え合い、交わりあってこそ、真の共同体。

「目指すは、開拓連盟の結成。そして――カレジア村の旗を、外へ掲げることですわ!」

令嬢、ついに他村へ外交に乗り出す。



「お嬢様、今日はどこの村へ……?」

「まずは“ヴェルサ村”ですわ!」

「ええと、確か……“魔導薬草とスローライフ”の村?」

「その通り。“我が道をゆく系”の隣人ですわ!」

カレジア村から徒歩二時間。のどかな草原を抜けると現れるのが、魔法薬草と“空気感”に支配された村、ヴェルサ。

到着して早々、出迎えたのは――

「ようこそ、草に包まれし者よ……」

「またずいぶんと詩的な歓迎ですわね……!」

出てきたのは、村の案内役にして“半睡状態の薬草師”こと、セラ・スロース嬢。話しかけても

「連携……?ああ……それって、風に任せることよね……」

「会話がふわふわすぎますわーーーー!!」

だが、彼女の村では薬草と癒やしに関しては圧倒的ノウハウがあり、特に「再生力ブレンド茶」と「筋肉疲労バーム」はガストンとリリアに爆ウケ。

「連携……しましょう。……でも、急がないで……寝落ちそう……」

「結んだ!? いま結びました!?!」

次に訪れたのは、“バルガ村”――山に囲まれた、鍛冶と筋肉の村である。

「誰だ!?」

「カレジア村の者ですの! 連携のご挨拶に!」

「筋肉はあるのか!? 熱意は筋で語れ!!」

「会話が物騒ーーーー!!!」

ここでは、鍛冶師たちが日々武器だけでなく“農具”や“水道バルブ”も作っており、品質は良好、だが口調がすべて“力こそ正義”。

「開拓連盟……筋肉に勝る支柱はなし!!」

「話は聞いてませんが気迫で通りましたわ!!」

バルガ村とは、“資材供給”の面で覚書を交わす形で、提携が成立。

アメリアは考える。

「……この調子でいけば、“村を超えた流通と支援体制”が、現実になる……!」

最後に訪れるは、文化系小村“フィリオナ村”。

絵画・詩作・音楽など芸術活動が日常にある村で、令嬢的には“推し”である。

「はじめまして、カレジア村の者で――」

「絵は描けますか?」

「いきなりそこから!?」

「詩は詠みますか? 歌は歌えますか?」

「外交ですよ!? 芸術テストですの!?」

だがこの村こそが、「開拓連盟」の理念に最も共鳴してくれた。

「開拓とは、創造。創造とは、芸術。あなた方の試みは、芸術的開拓です」

「なんという感性……!わたくしの魂が今、舞ってますわ……!」

三村との提携は成立。

「開拓連盟、設立会議を始めます!」

令嬢アメリアの号令とともに、カレジア村の講堂(納屋)が一夜にして“国際会議場”へと変貌を遂げた。

【開拓連盟設立会議 参加村】
・カレジア村(主催)
・ヴェルサ村(癒しとスローライフ)
・バルガ村(筋肉と鍛冶)
・フィリオナ村(芸術と自由表現)
・※追加参加:ノルデア村(商業と現実主義)

「ちょ、ノルデア村って招待しましたっけ!?」

「いえ、“勝手に来た”そうですの」

「外交ってフリーパスだったの!?」

ノルデア村は近隣最大の“現金主義村”であり、合理性と利益至上主義で知られる。
代表として現れたのは、切れ長の目とスーツめいた民族衣装を纏った女――クラウディア・ベイル。

「理想は美しい。しかし、利益がなければ潰れる。それが現実」

「一言目から冷水っ!!」

アメリアは落ち着いて対応した。

「クラウディア殿。理念と経済は対立するものではありません。“連携”こそが未来を築く鍵ですわ」

「言葉だけなら誰でも言える。実績を見せてもらいましょうか」

会場の空気が張り詰める。

だがそこに割って入ったのは、バルガ村の代表、ゴルドー。

「てめえ、言葉より筋肉見せろや」

「筋肉出す場じゃないですからッ!!!」

次に発言したのは、フィリオナ村の芸術家代表、メリス。

「連携とは、共鳴。だが、同調ではない。差異を楽しむ心がなければ、芸術は育たない」

「か、かっこいい……!」

「意味はよくわからんが納得した!!」

そして最後に、アメリアが壇上に立つ。

「皆さま。この村は、干し芋と鍬から始まりました。水道を引き、橋を架け、手紙を送り、今、村の外へ“声”を届けようとしております」

「ですが、それは“助けてください”ではありません。“共に進みましょう”という声です」

「風の村も、鉄の村も、詩の村も、計算の村も、それぞれ違う歩みをしてきました。それでも“開拓”という言葉に、心が動いたから――ここに来たはずです。共に歩むとは、異なる足音を恐れぬこと。どうか、この小さな村の願いに、耳を傾けてくださいませ」

講堂に、沈黙。

その後、セラ(ヴェルサ村)が小さく手をあげた。

「……いい夢……見れそう……賛成」

「寝ながら投票!?」

ゴルドー「鍬には鍬で答える。賛成だ!」
メリス「芸術的理念を感じた。協賛」
クラウディア「……正直、甘い。しかし――興味深い。条件付きで検討する」

アメリア「条件とは?」

クラウディア「“初回合同市”で、利益が出せたら。連盟加盟を正式に受け入れましょう」

アメリア「――望むところですわ」

こうして“理念”だけでなく“現実”も含めた、新たな試練が始まった。



「始まりました、“第一回開拓連盟合同マルシェ”!」

カレジア村中央広場が、この日ばかりは村境を越えた“文化と経済の交差点”と化した。

参加村の看板が並び、村民も旅人も集まり、特産品が所狭しと並べられる。だが、始まって早々――問題勃発である。

「おい! あのバルガ村の“鉄製トング”、こっちの干し芋屋の前で火花散らしてんぞ!」

「演出ですわって言ってますが、火が出てますの!!」

「フィリオナ村の詩人が“詩の朗読ブース”で急に即興ソング始めました! 通行妨害レベルの熱唱!」

「アートと混雑は紙一重ですのよ!!」

「ヴェルサ村のブレンド茶、何も書いてないラベルの瓶に入ってて逆に怖いんですけど!?」

「“飲むと分かる”が売り文句ってどういうことですの!?」

さらには、ノルデア村の出店が突如「全品“カレジア印”対応不可!」と掲げたことでカレジア住民が動揺。

「つまり……わたくしたちの“ブランド”が、通貨にならないということ……!?」

アメリアはすぐさま臨時広報ステージを設置。

「皆さま、本日のマルシェは“村同士の競争”であると同時に、“開拓の共演”ですわ!互いの“看板”を尊重し合い、商品の背景にある“村の物語”を語ってくださいませ!」

この言葉がきっかけで、マルシェは一気に“物語性バトル”へと展開。

・バルガ村「鍛冶と火の系譜」口上演説&実演鍛造
・フィリオナ村「詩で売る野菜」パフォーマンス朗読
・ヴェルサ村「癒しの沈黙タイム」全員で5分無言(不思議な人気)
・カレジア村「笑顔と鍬の伝説」干し芋早食い&語り部ルークの熱唱

最終的に一番売れたのは――

「“お任せハーブ瓶”五本セット(中身は不明)」

「わたくしの“奇跡の干し芋”は!?」

「“口に入れると懐かしさで泣きそう”とは言われてましたけど!!」

クラウディア(ノルデア村)は、冷静にこう評した。

「“開拓”とは、競争ではなく共創。……少しだけ、理解できた気がする」

「……少しずつ、ですわね」

そして、マルシェの最後には――

「連盟規約第一条:本連盟は、すべての“村の違い”を“可能性”として尊重する」

という一文が掲げられた。

アメリアは、深く一礼する。

「ここからが、“本当の連盟”の始まりですわ」