「橋が落ちましたわ」
朝の開拓ミーティングで、アメリア・ルヴァリエは静かにそう告げた。
「水が濁ってます!」「村の奥と郵便がつながってません!」「トイレの水が流れません!」
――カレジア村、インフラ崩壊の危機である。
開拓は土地だけにあらず。人の暮らしを支える“見えない土台”こそが、真に大切な「耕すべき領域」なのだ。
「今こそ、インフラ改革の時ですわ!」
橋を架け、水を引き、手紙を届ける。
令嬢が描く“未来の暮らし”が、ここから始まる――。
「お嬢様、橋が落ちてます!」
「ええ、昨日ガストンが薪代わりに“中央渡し橋”の床板を持っていったようですわ」
「なんで燃やしたあああああ!!」
「いやぁ、ちょうどいい板があったからなぁ……」
「“橋”って書いてある板、普通燃やします!?」
カレジア村の中心部と“畑エリア”を繋ぐ唯一の小橋が、薪不足のせいで焼却されるという大惨事。
「この件のせいで、“収穫物”が川向こうに取り残されてますの」
「経済ダメージが直接くるぅぅぅ!」
「ですので、新たに橋を架け直しますわ」
「誰が!?」
「もちろん、村総出で!令嬢直監修ですわ!」
「また“監修”入ったーー!!」
【カレジア村・緊急橋建設チーム】
・総監督:アメリア(設計・進捗確認・口出し)
・作業統括:ガストン(物理)
・補助:ルーク(図面の理解に苦戦)
・木材供給:ゼクス(石を削りそうになる)
・昼食当番:リリア(栄養と癒やし担当)
「こちらが橋の設計図ですの。“両側に干し芋模様の欄干”をつけて、中央には“笑顔の石板”を埋め込みます」
「機能性ゼロです、お嬢様!!」
「いいえ、“通るたびに元気になる橋”ですわ!」
「やっぱゼロですぅ
だが十日後――。
「完成ですわ! “スマイル・ブリッジ”、開通ですの!!」
「名前だけは超いい感じ!!」
村人たちはその橋を通るたび、自然と笑顔になった(欄干がくすぐったい形状だったため)。
アメリアは確信する。
“橋”とは、ただの通路ではない。“村と未来をつなぐ架け橋”であると――!
「村の“水”が茶色いですの!!」
「出ました!インフラ危機第二弾!!」
橋を修復した数日後――カレジア村では、井戸から汲み上げる水がにわかに“微妙な色と臭い”を帯び始めた。
「これは……水脈が“鍬形岩層”にぶつかって、ミネラルが過剰供給された結果ですわ」
「お嬢様がさらっと地質専門用語を……!」
「ついでに近くにゼクスが“動く石像”の試作機を埋めた影響もあるかもしれませんわ」
「石像が汚染源!?!?!」
とはいえ、村には“飲める水”“洗える水”“農業用水”といった多様なニーズが発生していた。
「つまり、“水道の区分整備”が必要ですわ!」
「それは分かるんですけど!どうやって!?」
「埋設管を引き、貯水槽を分け、圧力弁を設けて高低差を利用します!」
「高度技術村かあああ!!」
【カレジア村・水道革命作戦】
・設計監修:アメリア
・掘削担当:ガストン(穴掘り王)
・配管工作:ルーク(毎日パイプを逆に挿す)
・試験担当:リリア(水に濡れる天才)
・石像移送:ゼクス(理由不明)
水は引かれ、試運転が始まった。
「いざ、“カレジア・ウォーターネット”始動ですわ!」
ぶしゅっ!!
「リリアが噴水化したーーーーー!!」
「バルブ閉めて! ルーク早くバルブぅぅぅ!!」
「どっちだよ!? 赤と青どっちが止まるんだよ!!」
「青は冬です! 赤は夏です!!」
「意味がわからん!!」
水道整備は混乱の連続だったが、三度の爆水と二回の床下浸水を経て、ついに。
「村に“蛇口”がつきました……」
「感無量……です……」
「ちなみに、村内初蛇口使用者はヤギでした」
「ヤギぃぃぃ!!」
「さて、次は“郵便制度”ですわ」
「話題転換が早い!!」
「水が通ったなら、情報も通さねばなりません。“通信”は文明の母!」
「でも、郵便って何から始めるんですか……?」
「配達員、住所、ポスト、料金、そして“最初の手紙”ですわ」
「うわ、やっぱり全部やる気だこの人!!」
村内で“郵便局”として使われることになったのは、以前“薪置き場”として使われていた小屋。
「“火の気がある建物”に、“紙”を集めるのはやめましょうよ!!」
「改装しますから!」
そして、郵便の歴史が動き出す。
アメリアがしたためた、村初の手紙。
宛先は――“未来のわたくしへ”。
『開拓五年目のわたくしへ。あなたは今、どんな村を歩いていますか?』
その手紙は、封筒に入り、“未来ポスト”にそっと差し込まれた。
「……いい話じゃないですかお嬢様……」
「誰か泣いてます!? わたくしの語彙に感動しました!? 芋の香りにやられました!?」
こうして水と郵便が通った村には、
確かに、“暮らし”という実感が芽吹き始めていた。
「お嬢様、大変です! 水、止まりません!!」
「またですの!?」
村初の水道網が機能し始めたことで、村にはかつてなかった便利さと……そして混乱が芽吹き始めていた。
「今、全蛇口開放中らしくて、貯水槽が空に近いです!」
「どこの誰が水祭りしてますの!?」
「ヤギです!」
「おまえかーーーー!!」
水は通った。手紙も届いた。だがそこからが本当の“管理”の始まり。
アメリアは決断した。
「“使用量と維持費の概念”を、村に導入いたします!」
「出たーー! インフラ後の最大の敵、“料金制度”ーー!!」
【水道料金制度導入準備会議】
・議長:アメリア(超本気)
・会計:リリア(内心ビビっている)
・反対派筆頭:ルーク(自由水主義)
・迷子:ゼクス(水道管に入り込んで出られなくなっている)
・記録:ガストン(なぜか絵で記録)
「料金徴収には、“メーター”が必要では?」
「ですので、“流量棒”を各家庭に設置しますわ」
「棒!? 最新のやつですか!?」
「いいえ、木の棒です」
「超原始的ぃぃぃ!!」
「一日で棒の濡れ具合を測れば、水の使用量が目視できますの!」
「アナログぉぉぉ!!!」
とはいえ、料金制度には当然、議論が巻き起こる。
「水って、空から降ってくるもんじゃねえのか?」
「誰が蛇口開けてもいいのが“村”の良さだったんじゃ?」
「郵便も、お金取るの?」
住民の中に芽生える“利便と責任”の狭間。
アメリアは、全村民集会を開催した。
「皆さま。水は、確かに“誰のものでもない”自然の恵みです」
「ですが、それを“使える形”にするには、“手間”と“工夫”が必要ですわ」
「料金とは、“使う”ことへの責任。“便利”の裏には、“維持”があることを……忘れないでくださいませ」
静まり返る会場。
そのなかで、ティナが手をあげた。
「じゃあ……“水”に“ありがとう”って、払うってこと?」
「……ええ、そうですわ」
「じゃあ、わたし、おこづかいで払う!」
「……なんという、天使……!」
その一言が空気を変えた。
「俺も払うぜ!」「うち、芋でもいい?」「石でカウントできるよな?」
そこから、カレジア村に“料金”という新たな文化が生まれた。
同時に郵便制度でも、配達報酬、切手制、配達人シフト制度などが導入。
・配達員:リリア(朝便)
・配達員補助:ルーク(手紙に棒人間イラストを勝手に描いて怒られる)
・最年少配達補佐:ネル(全村民から信頼されている)
そしてアメリアは、再び“未来宛ての手紙”を書く。
『インフラとは、縁の下に咲く、支えの花。わたくしたちは今日も、この村を支え続けておりますか?』
そう記した手紙を、自ら設計した“耐火耐湿未来郵便箱”にそっと投函した。
村は、今確かに“自分たちの手で立つ”準備を始めていた。
朝の開拓ミーティングで、アメリア・ルヴァリエは静かにそう告げた。
「水が濁ってます!」「村の奥と郵便がつながってません!」「トイレの水が流れません!」
――カレジア村、インフラ崩壊の危機である。
開拓は土地だけにあらず。人の暮らしを支える“見えない土台”こそが、真に大切な「耕すべき領域」なのだ。
「今こそ、インフラ改革の時ですわ!」
橋を架け、水を引き、手紙を届ける。
令嬢が描く“未来の暮らし”が、ここから始まる――。
「お嬢様、橋が落ちてます!」
「ええ、昨日ガストンが薪代わりに“中央渡し橋”の床板を持っていったようですわ」
「なんで燃やしたあああああ!!」
「いやぁ、ちょうどいい板があったからなぁ……」
「“橋”って書いてある板、普通燃やします!?」
カレジア村の中心部と“畑エリア”を繋ぐ唯一の小橋が、薪不足のせいで焼却されるという大惨事。
「この件のせいで、“収穫物”が川向こうに取り残されてますの」
「経済ダメージが直接くるぅぅぅ!」
「ですので、新たに橋を架け直しますわ」
「誰が!?」
「もちろん、村総出で!令嬢直監修ですわ!」
「また“監修”入ったーー!!」
【カレジア村・緊急橋建設チーム】
・総監督:アメリア(設計・進捗確認・口出し)
・作業統括:ガストン(物理)
・補助:ルーク(図面の理解に苦戦)
・木材供給:ゼクス(石を削りそうになる)
・昼食当番:リリア(栄養と癒やし担当)
「こちらが橋の設計図ですの。“両側に干し芋模様の欄干”をつけて、中央には“笑顔の石板”を埋め込みます」
「機能性ゼロです、お嬢様!!」
「いいえ、“通るたびに元気になる橋”ですわ!」
「やっぱゼロですぅ
だが十日後――。
「完成ですわ! “スマイル・ブリッジ”、開通ですの!!」
「名前だけは超いい感じ!!」
村人たちはその橋を通るたび、自然と笑顔になった(欄干がくすぐったい形状だったため)。
アメリアは確信する。
“橋”とは、ただの通路ではない。“村と未来をつなぐ架け橋”であると――!
「村の“水”が茶色いですの!!」
「出ました!インフラ危機第二弾!!」
橋を修復した数日後――カレジア村では、井戸から汲み上げる水がにわかに“微妙な色と臭い”を帯び始めた。
「これは……水脈が“鍬形岩層”にぶつかって、ミネラルが過剰供給された結果ですわ」
「お嬢様がさらっと地質専門用語を……!」
「ついでに近くにゼクスが“動く石像”の試作機を埋めた影響もあるかもしれませんわ」
「石像が汚染源!?!?!」
とはいえ、村には“飲める水”“洗える水”“農業用水”といった多様なニーズが発生していた。
「つまり、“水道の区分整備”が必要ですわ!」
「それは分かるんですけど!どうやって!?」
「埋設管を引き、貯水槽を分け、圧力弁を設けて高低差を利用します!」
「高度技術村かあああ!!」
【カレジア村・水道革命作戦】
・設計監修:アメリア
・掘削担当:ガストン(穴掘り王)
・配管工作:ルーク(毎日パイプを逆に挿す)
・試験担当:リリア(水に濡れる天才)
・石像移送:ゼクス(理由不明)
水は引かれ、試運転が始まった。
「いざ、“カレジア・ウォーターネット”始動ですわ!」
ぶしゅっ!!
「リリアが噴水化したーーーーー!!」
「バルブ閉めて! ルーク早くバルブぅぅぅ!!」
「どっちだよ!? 赤と青どっちが止まるんだよ!!」
「青は冬です! 赤は夏です!!」
「意味がわからん!!」
水道整備は混乱の連続だったが、三度の爆水と二回の床下浸水を経て、ついに。
「村に“蛇口”がつきました……」
「感無量……です……」
「ちなみに、村内初蛇口使用者はヤギでした」
「ヤギぃぃぃ!!」
「さて、次は“郵便制度”ですわ」
「話題転換が早い!!」
「水が通ったなら、情報も通さねばなりません。“通信”は文明の母!」
「でも、郵便って何から始めるんですか……?」
「配達員、住所、ポスト、料金、そして“最初の手紙”ですわ」
「うわ、やっぱり全部やる気だこの人!!」
村内で“郵便局”として使われることになったのは、以前“薪置き場”として使われていた小屋。
「“火の気がある建物”に、“紙”を集めるのはやめましょうよ!!」
「改装しますから!」
そして、郵便の歴史が動き出す。
アメリアがしたためた、村初の手紙。
宛先は――“未来のわたくしへ”。
『開拓五年目のわたくしへ。あなたは今、どんな村を歩いていますか?』
その手紙は、封筒に入り、“未来ポスト”にそっと差し込まれた。
「……いい話じゃないですかお嬢様……」
「誰か泣いてます!? わたくしの語彙に感動しました!? 芋の香りにやられました!?」
こうして水と郵便が通った村には、
確かに、“暮らし”という実感が芽吹き始めていた。
「お嬢様、大変です! 水、止まりません!!」
「またですの!?」
村初の水道網が機能し始めたことで、村にはかつてなかった便利さと……そして混乱が芽吹き始めていた。
「今、全蛇口開放中らしくて、貯水槽が空に近いです!」
「どこの誰が水祭りしてますの!?」
「ヤギです!」
「おまえかーーーー!!」
水は通った。手紙も届いた。だがそこからが本当の“管理”の始まり。
アメリアは決断した。
「“使用量と維持費の概念”を、村に導入いたします!」
「出たーー! インフラ後の最大の敵、“料金制度”ーー!!」
【水道料金制度導入準備会議】
・議長:アメリア(超本気)
・会計:リリア(内心ビビっている)
・反対派筆頭:ルーク(自由水主義)
・迷子:ゼクス(水道管に入り込んで出られなくなっている)
・記録:ガストン(なぜか絵で記録)
「料金徴収には、“メーター”が必要では?」
「ですので、“流量棒”を各家庭に設置しますわ」
「棒!? 最新のやつですか!?」
「いいえ、木の棒です」
「超原始的ぃぃぃ!!」
「一日で棒の濡れ具合を測れば、水の使用量が目視できますの!」
「アナログぉぉぉ!!!」
とはいえ、料金制度には当然、議論が巻き起こる。
「水って、空から降ってくるもんじゃねえのか?」
「誰が蛇口開けてもいいのが“村”の良さだったんじゃ?」
「郵便も、お金取るの?」
住民の中に芽生える“利便と責任”の狭間。
アメリアは、全村民集会を開催した。
「皆さま。水は、確かに“誰のものでもない”自然の恵みです」
「ですが、それを“使える形”にするには、“手間”と“工夫”が必要ですわ」
「料金とは、“使う”ことへの責任。“便利”の裏には、“維持”があることを……忘れないでくださいませ」
静まり返る会場。
そのなかで、ティナが手をあげた。
「じゃあ……“水”に“ありがとう”って、払うってこと?」
「……ええ、そうですわ」
「じゃあ、わたし、おこづかいで払う!」
「……なんという、天使……!」
その一言が空気を変えた。
「俺も払うぜ!」「うち、芋でもいい?」「石でカウントできるよな?」
そこから、カレジア村に“料金”という新たな文化が生まれた。
同時に郵便制度でも、配達報酬、切手制、配達人シフト制度などが導入。
・配達員:リリア(朝便)
・配達員補助:ルーク(手紙に棒人間イラストを勝手に描いて怒られる)
・最年少配達補佐:ネル(全村民から信頼されている)
そしてアメリアは、再び“未来宛ての手紙”を書く。
『インフラとは、縁の下に咲く、支えの花。わたくしたちは今日も、この村を支え続けておりますか?』
そう記した手紙を、自ら設計した“耐火耐湿未来郵便箱”にそっと投函した。
村は、今確かに“自分たちの手で立つ”準備を始めていた。



