花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~

 私が腹立たしいのは、父の栄光を面白がって、父の、ちょっとおかしなところばかりを切り取って、寄せ集めて、架空の父を勝手にひとびとが作り上げてしまうことだった。本当の父を知らないくせに。鼻もほじるしたまに鼻毛が出ている、ちょっと抜けたところがあるのに、父の書いた小説は本当にシリアスなもので、その作品の強烈な部分だけをやたらとひとは覚えていて、私を見る都度、そのネタで馬鹿にする。……父がどれほど心血を注いで作品を作り上げたか、栄光の裏で血の滲む努力をしてきたのに、それを見ようともせずに、父の悪いところ、いまの落ちぶれた様子ばかりを言って回る。……うんざりだった。

 中学で、完全に、私はこころを閉ざした。頼りにしていた手紙も届かなくなり、アユちゃんたちとは別の学校に進学し、こころの支えを失った。あるとき、突然、死にたいと思った。強烈な衝動だった。台所でいつも母が使っている包丁を使って、父を刺して、自分も死のうと思ったことがあった。……そのとき。

 鈴が鳴った。どこからなのか分からなかった。気のせい? いや、また聞こえる。