花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~

「狭いところやけどどうぞ。ゆっくりしていってま」

 プレハブの小屋が立ち並ぶうちのひとつに案内される。母は……ここは、恋生が纏う空気とは別の世界。家を土地を家族を奪われ、それでも懸命に生きようと決めたひとたちの過ごす部屋。足を踏み入れるのに勇気を伴ったが、ドアを開いてくれる母に従い、先に靴を脱ぎ、部屋に入る。

「ただいま……」

 ここは、あまりに、神宮寺恋生の宅とは違った。

 プレハブの住宅は冬は寒さの厳しい能登ではきついに違いない。これからやってくる冬を父は母はどう乗り切るのか。壁に板が貼られているあたりあたたかみを感じさせたが、ここは、かつて私が生まれ過ごした実家とはまるで違い、どこかの事業所にやってきたかのようだった。

 家具も、こたつも、ポットも全部……見たことがないものだった。

 手頃なものに違いない。恋生の家に慣れ切った私にとっては衝撃の光景だった。恋生が、この家を見たらなんと言うだろう。

 いいや。あなたのことをそんなふうに見下したくはない。受け入れてくれると信じている。