花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~

 夢の懸け橋がなくなったいま、なおさら、海沿いのこのアスレチックは子どものこころを満たす。見ると、夕方間近だというのに、遊んでいる子どもたちがおり、遠巻きにお母さん方が見守っている。理解した。きっと幼稚園帰りなのだろう。アユちゃんが、ママ友の間にいさかいがあって悩んでいる、そんな話をしていた。

 緑川の子どもたちのなかに、年齢に対する上下関係が歴然と存在していて、ひとつ年が違うだけで相手も相手のママも偉そうにするらしい。その情報を裏付けるかのように、ボスらしきママが先導して声をかけている。……放っておけばいいのに。みーちゃんそっち行かないで。注意はすれど、ママたちにお喋りを止める気配はない。

 目が合った。強気な目をしていた。勝ち気な性格がうかがえる。……これは、アユちゃん大変だなと、同情する。

 ホテルに着くとチェックインを済ませ、母にはその間出入り口付近で休んで貰うように言い、スーツケースを置くと、手を洗い、それから母の元へと戻る。遠目に見る母はやはりやせ細っており、ここ、能登での生活が過酷なのだと思い知らされる。

「お母さん、お待たせしました」

「いいんよ。ほな行こか」

 母は、元々京都のひとだった。

 池水恋乃とは逆で、私は、自分が京都から連れ去られたことを憎む人間である。