Existence *

「行かれへん理由あんの?」

「まぁ…」

「なんや?」

「それは言わないっすけど」

「言われへん事は大したことちゃうな」

「いやいや、ちょっと明日は無理っすね」


いや、明日と言うより行くこと自体が無理。

まだ美咲の気持ちを聞いてはないし、それ自体解決していない。


「じゃあ、いつからやったらええん?」

「いや、いつからとかじゃなくて無理っす。他あたってもらってもいいっすか?」

「だからお前がええって思ったからお前に言うてんねん」

「こんな腐るほど社員が居んのに俺っすか?」

「じゃあ行かれへん理由なんやねん。それで決めるわ」


隣の空いている椅子に腰を下ろして、おもしろそうに頬を緩めた恭介さんは俺を覗き込んだ。


「んな事、言ったからって何かが変わるわけでもねぇし言わないっすよ」

「あー…俺には何も出来へんこと?」

「出来ねぇっすね」


ため息交じりに呟いて、俺は止めていた手を再び動かし、タイピングを始める。


「あー…なるほど。分かったわ」

「何がっすか?」

「女やろ?」

「……」

「ルキアが言うとったわ。俺の店でアイツやらかしよんねんって言うとったわ」

「……」


笑いながら恭介さんが言葉を吐き出す。

ほんっと喋りが多すぎて、俺の事が周りに筒抜けになっているのは相変わらずだった。


「大変やな。お前も。だから無理なん?」

「……」

「なぁ、ホストやったらさぁ簡単に誰でも手に入れられるんとちゃうん?そんなイメージやねんけど」

「……」

「ルキアも若いころ、女いっぱい居たもんなぁー…」

「……」

「でもそんなルキアが翔は俺が見た中で男前一番やって言うてたからなぁ」

「……」

「そんな男前でも苦労するんや」


声に出して笑う恭介さんを無視してパソコンに視線を送り続ていたが、その手を止める。

ため息を吐き出し、隣に居る恭介さんを見つめた。