Existence *

「もう、関係ないから」


少し間をおいて小さく呟かれる言葉に俺は逸らしていた視線を美咲に向ける。

目が合った美咲の瞳が困った様に揺れたのは気のせいだろうか。


「関係ないって?」

「もう、私と翔は関係ないでしょ?なのに今更そんなふうに言われたって困るの。翔だって、言ったじゃん」

「……」

「私には関係ないって!あの時、病院に行った時、私言ったよね?翔の病気が気になるって…」

「……」

「でも結局は何も教えてくれなかったでしょ?私には関係ないって、そう言ったじゃん!!来られると迷惑だって、その時そう言ったじゃん!」

「……」

「なのにセコイよ。なんで翔は来るの?それこそ迷惑だよ…」


美咲の声がリビングに反響する。

ずっと言いたかったことを我慢してたのが溢れだす様に美咲が叫んだ。


ごもっともな言葉を吐き捨てる美咲に俺は視線を逸らし息を吐き出す。

美咲にそう言われても仕方ない。


俺に会いに来てくれた美咲を避けたのは俺だったから。

でも、あの時はまだ心の整理がなんもついてはいなかった。


美咲から別れたいって言われて。

なのに美咲から来て…


本当なら嬉しいって思うはずが、あの時は何も考えられなかった。


「悪い。あの時はあぁ言うしかなかった。自分の中でもいっぱいいっぱいで、なのにあんな姿、美咲には見せたくなかったし心配すらされたくなかった」

「……」

「美咲に別れたいって、そう言われてムシャクシャして酒に溺れたってのは事実。その挙句、肝臓やられて…」

「……」

「馬鹿だろ、俺?…情けねぇよな」

「……」


ほんと何やってんだろって思うくらい馬鹿だった。

浴びるほど飲んじゃいけねぇって言われてんのに、分かっていながらも飲む俺は相当、美咲に言われた言葉に耐えられなかった。


そう思うと、馬鹿すぎて思わず情けない笑みが零れ落ちた。