Existence *

美咲が旅立ってしまうと聞いてから、もうその日が1週間に迫っていた。

どうしても美咲に伝えたいことがある。

これを伝えないと後悔すると自分でも思い、俺は一度帰宅した後、美咲の家に向かった。


電気が消えている家を見て、美咲が居ないとわかる。

暫く車の中で待ってみるも、いつ帰って来るのか分からなく、俺はスマホを取り出して美咲の番号を呼び出した。


そして迷わずに着信音を鳴らす。

何度鳴らしても出る気配がなく、その着信音に一息吐き捨てた時、前方に人影を捉える。

それが美咲だと分かった瞬間、俺は必然的に車から降りていた。


バタンと閉めた車のドア。

その音で美咲が振り向く。

その美咲の手にはスマホが握りしめられていた。


「…美咲」


名前を呼ぶと同時にまだ鳴り続けている音を切る。

美咲は戸惑っているのか、ただ俺の方をずっと見ていた。


「ちょっと話あんだけど。…ここでいいから」


近づく俺に美咲は困惑しているのか俺から少し視線を外した。

そう。戸惑うのも当たり前だろう。

病院に来た美咲を俺は避け、そしてお金を返しに来た時も素っ気なく、そして冷たく帰ったから。


だから美咲が戸惑うのも無理もない。


「ここじゃ、あれだから…」


暫くして聞こえた美咲の小さな声。

鞄の中から取り出した鍵を手にし、俺の横を通り過ぎていく。


玄関の扉を開けた美咲はゆっくりと振り返って俺を見た。


「ごめん…」


美咲が開けた中に吸い込まれるように俺は足を進め中に入る。

リビングに入ると美咲は肩にかけていた鞄を椅子におろし、立ち尽くす俺に視線を向けた。