Existence *

「でも、私はそれでも良かったんだよね。翔の事が好きだったし、あの頃も翔の事が好きな子達がいっぱいいたから私はそれで満足だった」

「……」

「翔と付き合ってるって言う自慢っていうの?それだけでも嬉しかったんだよね」

「……」

「自然消滅って言うか、翔の気持が私にないって事知ってたから、あの時何も言わずに消えたんだよね」

「……」

「でもまたこうやって翔の話を聞くようになって、会いたいって思うようになって、会ったら翔がいいってそう思った」

「……」

「翔の矢印が私に向くことはないのかな?」

「…ごめん。茜に向く事は、ない」


何がなんでも茜に向くことはない。


「そっか…」


表情を崩して薄っすら微笑む茜に「ごめん」と告げる。


「謝らないでよ。私も彼女に悪い事したから」

「……」

「彼女の事、幸せにしてあげて。…私も、私に向けられてる矢印に応えられる様に返答するわ」

「え?…あ、そう言うこと?」

「そう言う事。じゃあ、元気でね。あの時言えなかったさよなら言わせてね」

「あぁ」

「じゃあ、さよなら。元気でね、ありがとう」


最後は笑顔で手を振って行った茜の背中を見つめて、車に乗り込む。

帰宅した俺はネクタイを緩めながらソファーに倒れ込んだ。


その倒れ込んだままポケットに入っているスマホを取り出し、カレンダーを見つめる。



あと1週間。


美咲が旅立つ日まであと1週間しかない。

時間がない―――…