Existence *

「じゃあ尚更これでいいと思うけど」

「え?」

「美咲が俺と別れた事を決めたんなら、それはそれでもういいんじゃない?俺が会いに行っても変わらない」

「そうじゃなくて…」

「え?」

「別れた事を決めたんじゃなくて、」

「じゃあなに?」

「美咲。…美咲、もう一度海外に行きます」

「…え、どゆこと?」

「もう帰って来ない。あっちでずっと日本語講師の仕事をするって、」


正直、葵ちゃんが何を言ってんのか暫く理解出来なかった。

もう一度海外?

日本語講師?

もう帰って来ないって?


「え、ごめん、なんで?」

「なんでって私が知りたいですよ。でも美咲の意思は固いの。日本に居るのが疲れたって言ってました」

「…ごめん、そう思わせてんのは俺かもしんねぇな」

「言わないでって言われてたけど、でも私隠し事出来ないから」


緩んだ瞳を揺るがしながら葵ちゃんは頬に笑みを作る。


「この事、諒也は知ってたの?」

「はい」


あぁ、だからか。

これで漸く、分かったことがあった。

病院に来た時、諒也が何かを言いかけた事。

そして、あの美咲と同じ学校の若い男が言いかけた事。


でも二人は何も言っては来なかった。


「美咲は、いつ行くの?」

「4月の上旬です」

「え、4月上旬?上旬っていつ?」

「7日頃って言ってました」


今日が何日であと何週間後?

そう思って、テーブルに置いていたスマホを手に取り、カレンダーを出す。


…あと2週間。