Existence *

「付き合ってないから」


俺の言葉で俯いていた葵ちゃんが顔を上げる。

だけど葵ちゃんのその真剣な表情が俺を身構えた。


「誤解解いてもらってもいいですか?」

「誤解?」

「美咲は芹沢さんと元カノが付き合ってるって思ってるから」

「そう…」

「そうって、何も思わないんですか?」

「思ってるよ。なに言ってんのあの女とか、それを信じてる美咲もどうなのか、とか」

「じゃあ訂正して下さい」

「訂正って言われても、俺と美咲はもう何もないし、美咲にとっても別れた方が楽だと思うよ?」

「楽?どういう意味ですか?」

「あー…、まぁ何て言うの?そう言うめんどくさい女が周りにいっぱい居るから俺と離れた方が楽って事、かな」


ほんとにそう思った。

今、まさに茜の事を聞き、尚更そう思った。

このまま関係を続けると更に美咲を困らせるだろうと。


実香子に言われ、桃華さんに言われ、周りの奴らにほとんど言われたら、俺も俺で納得はする。


「芹沢さんはそうかもしれないですけど、美咲は違いますよ?」

「え?」

「私は芹沢さんではなく美咲の味方ですから」

「そうだね。むしろそうじゃなきゃ困るけど」


その言葉でフッと鼻で笑い笑みを作る。


「私、よく美咲に言われるんです。お節介って、」

「お節介って仲いい証拠だけどね」

「言っちゃダメって言われた事も言っちゃうから」

「そう…」

「隠し事が出来ないから」

「それっていい事だと思うけど。隠すとほんとロクでもねぇから…」

「ですよね。…芹沢さん、美咲の事どう思ってますか?」

「どうって、」

「私、美咲と折角会えたのに正直美咲の辛い顔とか悩んでる顔とか見たくないんですよね」

「……」

「私に出来る事って思っても美咲は強がりだから、私には頼ってくれません」

「……」

「でも美咲が決めた事だから―――…」


葵ちゃんが言葉を止め、唇を噛みしめる。

次第に目が潤み、その瞳が揺れる。