Existence *

「…翔くんやっと退院だね」

「あぁ」


荷物をまとめる俺に実香子が頬を緩めた。


「もう戻ってこないでよね」

「戻って来ねぇよ」

「その言葉信じてる」

「暫くは定期的に病院に来て」

「あぁ」

「じゃあ、お大事に」


微笑む実香子に俺も頬を緩める。

足を進めて行く俺の足が無意識に止まり、そして振り返った。

俺を見て首を傾げる実香子に俺は口を開いた。


「ありがとう。実香子にはいっぱい迷惑かけて悪かった」

「もぉ、ほんとだよ」


クスクス笑う実香子に俺もフッと鼻で笑う。


「ハグでも交わそうかと思ったけど流星いるから辞めとくわ」

「あ、え?ユウトに確認電話しようか?」


笑いながら言ってくる実香子に苦笑いが漏れる。


「何言ってんの、お前」

「何言ってんのは翔くんでしょ?抱きしめる相手間違ってるから」

「どゆこと?」

「ちゃんと自分の気持確かめなよ。じゃあ、またね。私仕事に戻るから」


ヒラヒラと手を振って行く実香子を見て病院を出た。

久しぶりの外の空気。

屋上で過ごすことはあっても、外を歩くことが久々だった。


停めていた車に乗り込みエンジンを掛ける。

マンションに向かう途中で寄ったコンビニで、飲み物を買って外に出た。


「…翔くん?」


車に乗ろうとした瞬間、不意に聞こえた声で俺は視線を向ける。


「あー…桃華さん」


振り返った先に居たのは桃華さんだった。


「なんかここで良く会うよねぇー」

「ほんとっすね」


笑う俺に桃華さんが頬を緩めた。


「退院してたの?」

「あー…さっき」

「え、さっきなの?」

「そう」

「じゃあ、またこれから仕事づくしって事?」

「なんすか、それ」


思わず桃華さんの言葉で笑う。