Existence *

「…――おい、お前また何やってんの?」


呆れて入って来た諒也が香恋を見てため息を吐き出す。

そんな諒也の声で香恋は起き上がり、ちょこんと座った。


「翔くん、あとこんだけ寝たら帰るって」


香恋が諒也に向けて両手を広げて見せ、笑みを浮かべた。


「え、あと10日で退院出来んの?」

「そう。やっと退院出来る。退院したら香恋遊ぼうな」

「うん!お魚見に行く」

「魚?」

「うん!こーやってぇー泳いでるっ、」


魚の泳ぐ真似をして笑う香恋に俺も頬を緩めた。


「あぁ、水族館の事?」

「うん!」

「じゃあ行こっか」

「うん!」

「もぉ、香恋。翔さんは忙しいから行く暇ないって」


諒也が顔を顰めて、香恋を見つめた。


「香恋、翔くんと行く」

「なんでこいつこんなワガママになってんの?」


諒也が呆れた様にため息を吐き出し、パイプ椅子に腰を下ろす。


「これはワガママじゃねぇだろ。なぁ?香恋」

「いや、わがままだろ。翔くん、翔くんってマジでうっさい」


思わず諒也の言葉に苦笑いが漏れる。

その事に関しては俺は何も言えないでいた。


「あ、そうだ。翔さんの新しい会社で何か働くの募集してねぇの?」

「え、どゆこと?」

「葵がファッション関係で仕事探してる」

「あ。え?葵ちゃん働くん?」

「そう。もしかしたら翔さん何か知ってるかなーって思って」

「そんなん知り合いに聞いたら結構あると思う。また聞いとくわ。香恋は預けるん?」

「まぁ、今でも預けたりしてるけど、保育園って感じでもねぇしな」

「そっか。じゃあ、それまでにいっぱい遊ぼうな、香恋」

「うん!」

「つか翔さん、そんな遊んでるほど暇じゃないっしょ」

「ま、まぁそうだけどなぁ…やることもいっぱいあるけど、ある程度はここにいる間に終わらせてる」


それに海外に行く前に香恋と遊ばないとって言う思いもある。

流星と蓮斗には言ったけど、諒也には言えない。

いつ、どこでこの話が流れるかは分からないが、行く直前まで言うつもりはなかった。


葵ちゃんと美咲が繋がってる限り、出来るだけ俺の事を言うのは避けたい。