Existence *

「お前、あのいい方はねぇだろ」

「だって、この前も誰か来てたじゃん」


きっと数日前に来た茜の事を言ってるんだろう。

その事には何も触れずに香恋を見て頭を撫ぜた。


「香恋、久しぶり。全然来なかったな、お前」

「うん、だって実香ちゃん、ちっぱいするから怖かった」

「えー、香恋ちゃんそんな事言わないでー」


ニコニコした香恋が小さな手で俺の手を握る。


「香恋、手冷たいぞ」

「寒かった。香恋もここ入る」


そう言って靴を脱いだ香恋は俺の隣で寝転んだ。

可愛い香恋が微笑んで俺を見上げて嬉しそうにする。


「香恋、お前誰と来たの?」

「パパ。電話してる」

「そっか」

「翔くん、おうちに帰るの?」

「うん。来週かな」

「来週?」


分らないのか香恋が首を傾げる。

そんな香恋の両手を広げて、その指、一本一本数えた。


「10回寝たら帰るよ」

「ふーん…、実香ちゃんとバイバイするの?」

「うん」

「元気になったの?」

「元気だよ。だから香恋とも遊べる」

「やったぁー」


嬉しく微笑む香恋を見て、実香子が勤務に戻るためバイバイをする。


「どこ行きたい?」

「うーん…、この前みぃちゃんと遊んだ」


その名前を聞いて、また思い出す様に薄っすら笑みが零れた。

懐かしい呼び名。

あいつは元気にしてんだろうか。

もう終わったのに名前を聞くと顔が浮かぶ。


「へぇー…良かったな。楽しかった?」

「うん!みぃちゃん、すごく可愛かった」

「そっか…」

「香恋、みぃちゃん好き。実香ちゃんも好き。みんなみんな好き」

「俺も香恋好き」


にこっと蔓延の笑みで微笑んで、香恋が抱きつく。

そんな香恋に苦笑いしながら俺は香恋の頭を撫ぜた。