Existence *

「流星にも言ったんだけどよ、俺一年くらい海外で仕事すっからさ、もういっかな…」

「へぇー…海外な。向こうで会社興す気?」

「うーん…どうかな」

「ま、何も考えずに行けたらいいけどな」

「…どゆこと?」


落としていた視線を蓮斗に向ける。

目が合った蓮斗は頬に笑みを作った。


「まぁ、その内分るわ」

「は?」

「そろそろ帰るわ。仕事の合間にお前の顔見に来ただけだし」

「あぁ」

「お前、実香子に謝っとけよ」


笑いながらそう言って病室を出て行った蓮斗にため息を吐き出し、再びパソコンを広げた。

実香子は帰ったのか、その日は一度も現れる事がなかった。

次の日も来なく、他の看護師に聞いたら休みだとか。


ほんと、なに実香子の事まで心配してんだか…

でも実香子の言ったことは正しい。


結局病院で出来る事はパソコンを広げて仕事しかなくて、毎日をその時間につぎ込んでいた。

そんな日が刻々と過ぎ、2月終わり。


冬の寒さを知らないまま冬が終わろうとしていた。


「…翔くん、女の子来てる」


パソコンから視線を上げると、体温計を持った実香子が俺にそう告げ、手首に機械を当てる。


「女?」

「そう。めっちゃ可愛い子が入り口で待ってる」

「だれ?」

「確認すれば?ほんと次から次へと…」


そう言った実香子はため息を吐き出し、体温を記入して、扉の方向へ向かって声を掛けた。


「どうぞー、入っていいですよ」


実香子が言った瞬間、足音がこっちに近づき――…


「翔くんっ、きゃはっ!」


声を上げて勢いよく俺に抱きついてきたのは香恋だった。


「おー、香恋っ、」


そんな香恋を見て実香子が笑みを浮かべて笑い出す。


「香恋ちゃん、翔くんに会えて良かったねぇ」

「うん!」


元気よく返事をする香恋から実香子に視線を移し、俺は眉を寄せた。