Existence *

「お前、痛いって。失敗しただろ」

「それくらい我慢してよ!」


失敗して刺した針を一度抜き、もう一度違う場所に針を刺す実香子を見て蓮斗は面白そうに笑った。


「実香子ちゃん、今日はやけにご機嫌斜めですね」

「こんな患者初めてだよ!もっと自分の行い改めた方がいいよ!だから美咲ちゃん離れてくんだよ!自分のせいじゃん!」


声を張り上げる実香子は採血し終わった道具を片付けながら俺を睨んだ。


「お前、ずげぇ言われてんぞ」


蓮斗が笑いながら実香子を見た後、俺をみる。

ため息を吐き出した俺はそんな2人から視線を外し、蓮斗が持ってきたビニール袋の中をあさった。


「あー、悪いな」


袋からカートンのタバコを出し、それをテレビ前のテーブルに置いた。


「レン君もそんな悪影響な差し入れ持ってこないで」

「俺にキレんなや」


フンっと顔を背けた実香子は顔を顰めたまま病室を出ていく。

そんな実香子の背後に俺は深いため息を吐き出した。


「ありゃ帰ったらユウトにすげぇ言ってんな。お前また殴られるんじゃね?」

「だから何もしてねぇって」

「自分の行い改めろっつってたぞ」

「最近は改めすぎてずっと仕事してるっつーの」

「お前は仕事しかねぇのかよ」

「それアイツにも言われた」

「ここに居てまでやんなきゃいけねぇのかよ。俺だったら何もせずにボーっとするわ」

「そうしたいけど余計な事考えっから…」


無意識に呟いた言葉に蓮斗が笑いだす。


「余計な事?その余計な事を考えねぇといけねぇんじゃないのかよ。ユウトにこっぴどくなんか言われたんじゃねぇの?」

「まぁ…、アイツも実香子もめんどくせぇわ」

「俺からしたらお前もめんどくさいけどな」


クスクス笑う蓮斗から視線を外し、俺は一息吐いた。