Existence *

実香子が入ってきたことによってサクラは小さく息を吐き捨て俺から距離を置く。

そしてパイプ椅子に座って、足を組んだ。


「採血します」


実香子のいつもと違う素っ気なく低い声。

腕を出す俺に力強くアルコールの綿をこすりつけてくる。

もう表情で分かった。

実香子は怒ってる。

怒ってると言うか、呆れているのに違いない。


「ねぇ、看護師さん?」

「…なんでしょうか?」


サクラの声で実香子が返答する。

足を組んで派手なサクラがボブの明るい髪を耳に掛け、クスリとほほ笑んだ。


「ねぇ、看護師さんもさぁー、翔の事好きなの?」

「はい?」


実香子の低い声。

顔を顰めた実香子がサクラに視線を送った。

って言うか、またそんな意味分かんねぇ質問すんなや。

余計に実香子が怒る。


「え?だってそうでしょ?だから担当なんてしてんでしょ?」

「違います」

「え、あ!そうなの?じゃあ、あれだっ!看護師さんも身体だけのって事?」

「すみませんが、何を仰っているのか分からないのですが」

「えーなんで?同じ女だったら分かるでしょ?目の前に男前居たらヤリたいでしょ」

「はい?」

「普通抱かれたいって思うでしょ?だからさぁ私、翔に会いに来たの」

「あのですねぇ、あなた一体なんなんですか―――…」

「おい、もうお前帰れっ、俺もお前に用ねぇから。もう二度と来なくていい」


実香子の声を遮って俺はサクラに視線を向ける。

不機嫌そうに顔を崩したサクラはフッと息を吐き出し、立ち上がった。


「私、翔みたいな男前好きだけど、つまんない男は好きじゃないし興味ないわ」

「あぁ、そうかよ」


フンと吐き捨てサクラが病室を出て行ったあと、実香子の顔が更に怒っていた。