Existence *

どうしようもないくらいに吐き出したため息が冷たい空気の中、白くなる。

いつから居たのであろう分からない周りの視線がスッと俺から避けられる。


そして足を進めた時、その人通りの中から俺の視線が止まった。

いつからそこに?

と思うほど呆然と立ち尽くす見た事のある顔。


そこから視線を逸らして、その横を通り過ぎた時、


「あのっ、」


慌てて叫んだ声が俺の背後に飛んできた。

その声で立ち止まり、振り返ってその子を見つめる。


目の前には表情を崩した美咲の教え子。


「あのっ、美咲センセ―と…」


そこまで言いかけて、女の子は俺と目が合った瞬間、瞳を泳がせた。


「なに?」

「美咲センセ―と何かあったんですか?センセ―最近元気なくて…」

「……」

「見てたら分かるんです。センセ―は元気に振舞ってるんですけど、なんか寂しそうにしてます」


その言葉に俺は軽く頬を緩ませた。


「そこまで気になるって、アンタほんとに美咲の事すきなんだな」

「好きです。センセ―には感謝してるので」

「そう…」

「えっと、その…」

「美咲とはずっと前に終わってる」

「…っ、」


俺の言った言葉で女の子の目が見開いたのが分かった。

そしてその瞳が驚くように揺れた。


「だから美咲が元気ないとか、そう言うのは俺には分かんねぇから」

「なんで、…別れたんですか?…あ、ごめんさい。つい余計な事を…」


慌てた様に口走って、女の子は眉を顰めた。


「あー…俺、振られたから。…あ、この事さぁ美咲には言わねぇでくれる?」

「…え?」

「アンタがどこからどこまで話を聞いてたのかは分かんねぇけどさ、さっきのあの女と話してたの」

「……」

「何もかも終わったことに美咲を巻き込みたくねぇの」

「…終わった?」

「そう。美咲とはもう終わってんの。だから言わないでほしい。言ったらさ、またアイツ気にすんだろ?これ以上迷惑かけたくねぇから」


表情を曇らせる女の子に俺は頬を緩め、その場から足を進ませる。

車に乗る前に買った水を喉に流し、深く息を吐き出した。