Existence *

「…―――楓の遺伝子頂戴。身体で返してよ」

「は?何言ってんの、お前。ぶっ飛んだ事、言ってくんなや」

「これが9年分って安いもんでしょ」

「安くねぇよ」


まじでこの女はいったい何を考えてるんだろうか。

俺の遺伝子?

意味分かんねぇわ。


「結婚急かされてんだよね、私」

「だから?」

「政略結婚して、家系の為に別に好きでもない男の跡取り作って、うんざりなのよ」

「……」

「だから楓の遺伝子が欲しい。政略結婚したら子供急かされるからさぁ」

「いや、まじで何言ってんの、お前」

「別に楓と結婚しよって言ってないでしょ?結婚したら婚約者の子供として育てるわ。周りにさぁ、居るのよね、そうしてる子が」

「知らねぇよ、んな事」

「ゴムなしセックスしてくれたらいいだけだから。簡単でしょ?」

「は?簡単でもねぇし、しねぇから」

「じゃあ、シリンジ法でもいいけど」

「お前さぁ…」


そこまで言って深くため息を吐き出す。

なんならもう、言う事すら何もなくなってきた。

もうこの先の話の会話が読めない。


セックスもシリンジ法もしねぇわ。

話をこじらせんなよ。


「楓には分からないでしょうね、政略結婚の重みなんて」

「悪いけど、分かんねぇわ。産まれた時から裕福で、全て何もかも欲しいものが手に入ってきたお前らの名家の事なんか分かんねぇよ」

「何でも手に入る?笑わせないでよ!じゃあ、私と結婚してよ」

「はい?」

「それで何もかも手に入るから」

「ずっと前から言ってっけど、リアとは付き合えない。俺にも好きな奴は居る」

「へぇー…もう別れてんのに?」


そう言ってリアは口角を上げた。

こいつはいったい俺のどこまでを知ってるんだろうか。