Existence *

待ってる時間をスマホで潰す。

いつ何時に帰宅するのかも分からない美咲をただ俺はひたすら待ち続けた。


一時間半くらいは待ったのだろうか。

不意に視線を前に向けた時、俺の視界に人影が写る。

見た瞬間、美咲だと分かり、俺はすぐに車から降りて声を掛けた。


「…美咲」


暗闇だから美咲の表情は分からないが、立ち止まって俺の方を見ていたのだけは分かる。


「話がある」


そう言って俺は車のドアを閉め、足を進めた。

そんな俺に何も口を開かない美咲は俺の横を通り過ぎ、玄関を開ける。

その開いたドアに手を添えたまま美咲は後ろに視線を送り、俺を見つめた。


なに?と言うような視線。

その美咲の視線に吸い込まれるように俺は足を進めた。


「…退院、した…の?」


漸く口を開いた美咲は鞄を椅子に置き、俺にぎこちなく視線を向ける。


「いや、外出許可ってやつ」

「…外出許可?」

「じゃねぇと、お前来ねぇだろ」

「……」


こんなに待ってんのにお前は来なかった。

電話に出る事もなければ、諒也が伝えたのにも関わらず、お前は俺を拒否し続けた。


拒否の理由は聞かなくても、分かる。

俺に気持ちがない事。

俺との事を全てなかったことにしたい事。


だから、これを渡しに来たんだろう。

持ってきた封筒に入ったお金をテーブルの上に軽く投げて置く。

ほんと、お前の意図は何?

お前がしたい理由が俺には分からない。


「これ、何だよ」


視線を美咲に向けると、美咲は目を少しだけ泳がせ俺から視線を逸らした。


「返そうと思って…」

「は?だから何で?」


返そうと思ってって、何の金?

まじで意味わかんねぇわ。

そんな事されたくもねぇし、してほしくもない。