Existence *

「すげぇ事言うんすね、ほんと…」

「そっちこそ、それを望んでんじゃねぇの?」

「流石そこまでは考えてなかったけど、跡取り必要ならそれでいいんじゃないっすか?俺はアンタら周りの事はどうでもいいので。ただ、これ以上傷つけてほしくない人は居る。俺にも大切な人はいるんで」

「へぇー…リアになんかされたってこと?」


男は表情を緩め、フッと笑った。


「別にリアを傷つけるとかそんな事は一切ない。確かに俺はあいつに感謝してるし、あいつを大切に想ってきてた。でも、その大切の意味は愛とかではない。俺にも俺の気持ちがあって、好きって思える奴を好きになりたいと思う」

「……」

「アンタだってそうなんじゃねぇの?政略結婚とか言っときながら他に女が居んだからよ」

「まぁ分からなくもないけどな」

「政略結婚だか何だかしんねぇけどさ、結婚すんのならそれなりにリアの事、大切にしてやれよ」

「それ俺に頼んでんの?」

「そう、アンタしか居ねぇだろうが。俺には出来ないから」


そう吐き捨てた言葉に男はフッと鼻で笑い笑みを浮かべた。

その笑みを見て俺は男に背を向け足を進めた。


停めていた車に乗り込み、タバコを咥える。

火を点けて車のドアを開けてすぐスマホを手にした。


まだ美咲が帰宅するには早い時間。

時間潰しにどこかの店に入って、待つという選択もなかった。

どこかに入ってしまえば、俺は無意識に飲んでしまう。


車で来たとはいえ、店に入ってしまうと、飲みたくなる気持ちが溢れるだろうと思った。

今の俺はきっとそうなってしまうだろうと。


だからその時間を、美咲の家の近くで待つことにした。

心から会いたいと言う気持ちは今はない。

どっちかと言うと、会いたくはない。


でも、こんな中途半端のままでは終わりに出来なかった。