Existence *

「ちょっと、ここで名前で呼ばないでよ」

「なんで?みんなお前と俺の事知ってんだから別にいいだろうが」

「そうだけど、翔くんが呼んだらみんなの視線浴びちゃうから」

「そんな事知らねぇよ」

「で、どうしたの?」


実香子がナースステーションから出てきて俺に近づく。

そして俺の腕を引いて場所移動をした時、実香子は俺を見上げた。


「悪いけど、今から外出許可だしてくんね?」

「はい?」

「だから外出許可」

「え、なに言ってんの?無理だよ」

「は?なんで?パパっと書きゃいーだろ、んなもん」

「だからそれが無理だってば」

「そこをなんとかしろよ」

「なんとか出来ないよ」

「勝手に出て行きてぇけど、出来ないからお前に言ってんだろうが」

「私にそんな権利ないよ」

「じゃあ、権利出せる奴に言って来いよ」

「ちょっと、どうしたの?なんでそんな怒ってんの?」


実香子が顔を顰めて、俺を見つめる。

その表情に一息吐き、俺は視線を逸らし、再び実香子に視線を送った。


「頼むから、許可出してほしい」

「無理だよ。翔くん、外出したらお酒飲むから無理だよ」

「飲まねぇから、だからお願い」

「せっかく今、回復してんのにまた飲んだら――…」

「だから飲まねぇって言ってんだろ」

「じゃあ、何しに出るの?理由聞かないと許可なんて出せないよ」

「言ったら出してくれんの?」

「それは婦長さんと医師が決める事だけど…でも私が出来る事はしたいと思ってる」

「…美咲に会いに行く。会って話したいことがある」

「美咲ちゃん?」

「あぁ」

「会ったらすぐに戻って来る?」

「一泊2日」

「え?一泊2日?無理だよ」

「俺にも終わらせたいと思ってる事がある。このまま何もなかったかのようには出来ねぇの」

「……」


ジッと見つめて来る実香子の視線が俺から逸らされる。

顔を顰めたまま実香子は俯く。

その姿に俺は口を開いた。