「あの……具合悪いんですか」
控えめに問えば、彼はコクリとうなずく。
ジャージの胸元には「吉崎」と刺繍がある。
「よ、よしざき先輩、でいいんですかね。立てますか?保健室行きましょう」
肩に腕を回そうとしたとき、吉崎先輩がぐらりと寄りかかってくる。
わたしの胸におもいきり頬をうずめて、ついにはまぶたを閉じてしまった。
「あ、あの……」
「ごめん。すこしのあいだ、抱きしめてほしい」
「え」
「きみの匂い、おちつく」
むぎゅっと背中に腕をまわされた。
どう見ても痩躯なのに力は強くて、ぜんぜん逃げられない。
「わ、わかりました……。それで、先輩の具合が良くなるなら……」
「うん。ありがとう」
ふにゃりとほほえみ、胸のふくらみに頬ずりをしてくる。
う……ナチュラルになんてことを……。
しかし病人相手にむやみなことはできない。
あきらめて、大きな体を抱きしめ返した。
これが、わたしと吉崎先輩の出会い。



