「わかりました……けど、わたしは悪い後輩なので嫌がらせ重視でいかせてもらいますね」
「むっ、先輩にいじわるしてはいけませんっ」
「後輩にわがまま言ってはいけません」
トートバッグからとっておきのものを取り出す。
「じゃーん。6限目の体育で使用した、できたてホヤホヤの完熟ジャージです」
できたてなのに完熟なのはスルーしてもらって。
学年カラーの真っ赤な2年ジャージ。
鮮やかというより、もっと深い色合いのワインレッド。
先輩たちのくすんだ濃緑ジャージより、よっぽど綺麗だとクラスの誰かが言っていた。
失礼な後輩でごめんあそばせ。
「ふふん。これを上にかけて差し上げましょう」
「え、な、なに、ジャージ?純の?」
「はい。わたしのジャージです」
ほら、と胸元の『弘川』という刺繍を見せれば、吉崎先輩の目じりがみるみるうちに染まった。
え、なにその反応。
「におい……かぎたい」
なにそのひとこと!!
「ふつーにイヤですよ……先輩のヘンタイ」
「んむ、心外。下心なんてないもん」
「ほんとですか?神に誓えます?」
「うるちゃい。ケンゼンな男子高校生の証拠だろ、下心なんて」
「開き直りやがった……」
「使いたて……だよね?……わ、すごい、はやくちょーだい」
「他人の汗と涙の結晶ですよ?たぶん、ばっちくてイヤだとおもいます」
腕を伸ばしてくる先輩をどうにかあしらい
その体の上にふんわりとジャージを掛けてやる。



